コーディネーターの部屋
求められるまなざしを持てているか
私たち教員は、授業がないこの夏期休業の期間に様々な外部機関の研修を受けます。
そのうちのひとつを紹介したいと思います。
「認定NPO法人ピッコラーレ」さんの『思いがけない妊娠への相談対応研修』です。
(今回、HPで広報させていただく旨、ご了承をいただきました。)
配布されたチラシには「妊娠が困りごとになるとき」とあります。
「妊娠が困りごとにならない社会を作るために」
「『誰にも頼れない妊娠』をなくしたい」
とも書かれています。私たちは何を知り、どう関わればいいのでしょうか。
研修の中では虐待死と若年妊娠のデータが紹介されました。
子どもの虐待死で最も多いのは「0歳児」とあります。
確かに子どもの命を救えなかったことは悲しい出来事ですが、
妊娠期間中、その女性は誰にも相談できず、母子手帳も交付されず、孤独に出産をむかえたことを考えると、
本来守られるべきはその女性だったのではないか、と言えないでしょうか。
「出産場所は自宅」「母子手帳未交付」「妊婦検診未受診」などがほとんどだそうです。
未受診の背景には、「誰にも話せなかった」「誰かに相談していいとは思わなかった」があるそうです。
『国際セクシュアリティー教育ガイダンス【改訂版】』(明石書店、2020)の中には
「意図しない妊娠は起こるもので、すべての若者は健康と幸福のために必要なサービスや保護にアクセスできるべき」とあります。
妊娠は女性ならば誰にでも起こりうることであることは意外と忘れられていることかもしれません。
(画像は amazon.co.jp)
「自律とは優れた依存である」という言葉があります。
「援助希求行動」という言葉もあります。
私たちが、そうした女性に寄り添い、SOSをキャッチできるようになること、
また、包括的性教育について検討することと同時に、
女性だけの問題ではなく両性が互いに学びあう必要があると感じました。
私たち自身が「求められるまなざし」を持てているか、自問したいと思います。
小中学校の先生方との研修会
学校が夏休みに入った7月の最終週に、川越市の研修会にお招きいただき
『発達障害等の理解と指導法~基礎編~』と題した話題提供を行いました。
研修会で使用したスライドより
参考:バル・クミン他、『教師のためのアスペルガー症候群ガイドブック』、中央法規、2005
研修の途中、いただいた「ご質問」にはとても臨場感があり、
ぜひ多くの方と共有したいと思いましたのでここでご紹介します。
(回答はあくまで分校Co.のNがしたものです。ご意見いただければ幸いです。)
☆回避や拒否をする子。ワガママなのか、容認していいものか迷ってしまう。
⇒私はその問題となる拒否や回避などの行動が「その子自身の問題」なのか、
「その子が集団(学級など)に所属することを妨げる問題」なのか、
を考えるようにしています。
後者であれば、「やらない」ではなく
「いつならできるか」「どのくらいならできるか」
「どんな助けがあればできるか」を一緒に考え、一緒に取り組み、
「学級」や「学校」という共同体の大切な一員である感覚を育てたい、と思っています。
☆支援の必要な子に支援員がついているのだが、その他の子に「どうして〇〇ちゃんばっかり…」と言われてしまう
→その発言に続く文言は「・・・ずるいなー」、あるいは「・・・うらやましいなー」
ではないでしょうか?
その子だけでなく「特別な支援の必要でないその他の子」達は、
「〇〇ちゃんと同じ支援」が欲しいのではなく
「先生のまなざし(関心や承認)」が欲しいのかもしれません。
仮に、それを易々と獲得している(ように見える)〇〇ちゃんがうらやましいのだとすると、
「よく寝てる?」「元気な挨拶ありがとー!」「水分摂ってる?」
「廊下歩いてて偉いね」「~~してくれてるの見てるよ」
・・・など、先生からの「当たり前を承認される」「見てもらえている安心感」が
あるといいのかもしれませんが、どうでしょう。
嵐山学園分校では、教員同士が些細なことでも、やや大げさに
「すごい!」「有能だ~」「さすが!」など賞賛しあいます。
ユーモア半分ですが、半分は本気です。大変な状況の時こそ、互いのねぎらいが必要です。
職員室も子どもを支える共同体でありたいものです。
R5公開講座申込スタートしています
今年も嵐山学園分校の校内研修の一回を皆さんと共有できるよう
8月25日(金)に「公開講座」を企画しました。
嵐山学園施設長の医師、早川先生に、「『子どもに寄り添う』ということ」をテーマにご講演いただきます。
・「受け入れてはいけないワガママ」の判断がつかない
・「本人の意思を尊重すること」と「指導」の境界線ってどこにあるんだろう
・子どもを叱れない。子どもとの関係が壊れてしまうようで怖い
・どうしてもこの子の行動を受け入れられず拒否したくなる 許せない
・・・などの思いを抱いたことはないでしょうか。
支援者自身の育ってきた歴史や価値観、もっと言えばトラウマ体験も含め
コントロールの難しい「何か」が子どもとの関係に影響を及ぼすことがあると感じています。
「感情労働」という概念で自分の仕事の在り方を見直しつつ
「寄り添う」という言葉に含まれる厳しさ、難しさを
みなさんと学びあえたら嬉しいと思います。
お申し込みは←の「公開講座」をクリックして必要事項をご記入ください。
そしてぜひ、事前にDr.にお届けし講演内容に反映できるよう依頼してみますので
講師へのご質問『講師へのご質問』も書いてください。
病弱教育の役割
先日、職員室で「病弱教育の役割ってなんだろうね」という話になりました。
県の就学基準によると、教育の対象としては
「…継続して医療または生活規制の必要な・・・」とあります。
『継続した医療的な規制』⇒入院中、あるいは退院直後などの療養期間
『継続した生活規制』⇒福祉的な保護期間、社会的養護下 などがイメージできます。
でも教育の対象はそうであっても、教育的な支援の対象はそれだけでしょうか?
私たち病弱教育の担当者は、今目の前にいる子を
『それぞれの本来いるべき場所から大切に預かっている子』として見て、
『これまで、あるいはここを離れてからの生活の大変さを展望』しながら
指導しています。
分校は総合環境療法下にあり、さまざまな専門家が互いに意見交換しながら
指導や支援が進められる現場です。
さらにその環境は互いの指導意図を共有することを容易にしています。
恵まれた指導環境であるからできることも多い ことを忘れず、
よき通過点でありたいと願っています。
分校内研修資料より抜粋
また私たち病弱教育は、こうした環境の子どもたちの指導だけでなく
「子どもが本来いるべき場所」の先生方や、
入院・入所するまでの困難な状況を見守ってくれた先生方、
さらに退院・退所した後に、環境の折り合いを調整してくれる先生方
にとって、必要な時に助けになる存在でありたいと願っています。
『特別支援教育の保健室』と言うのはおこがましいかもしれませんが、
いつでもここにおります。
話を聞かせていただけませんか。
健康に、健康を育てよう!Gesundheit!
小中連携会議に参加しました
毎年6月に、市町村教委のご担当者様と、各特別支援学校のCo.が顔を合わせ
地区ごとに懇談する「特別支援教育小中連携会議」が開かれます。
今年は6月2日に行われ、嵐山学園分校からもCo.が出席いたしました。
嵐山学園分校には学区がありません。児童生徒の学籍は「学区」ではなく
「福祉的な措置(『嵐山学園に入所』)」に伴って異動となります。
今回は西部地区の懇談に参加しましたが、他地区の市町村教委の先生方にも
嵐山学園および嵐山学園分校の子ども達を知っていただける機会の必要性は感じております。
今回の懇談でも短時間の自己紹介がありましたが、
ここ『コーディネーターの部屋』では文字にして残しておきたいと思います。
他地区の市町村教委の先生方、前籍校・転出先校の先生方の目に届き
必要な時に思い出していただけたら幸いです。
夏には、小6・中3の児童生徒それぞれの関係校の先生方や市町村ご担当者様に
お越しいただく「関係者連絡会」も計画しております。何かとお手数かけますが
社会的養護下の子どもたちの教育のためお力をお貸しください。
盛り上がった校内研修
嵐山学園分校では今年も、嵐山学園の専門性をお借りしながら
『専門研修』と称した校内研修を実施しています。
先日の研修は、心理学・神経学的な専門性の高い内容だったのですが、
その難しい内容を、子どもたちの事例とからめてとてもわかりやすく解説していただき、
研修後の職員室での意見交換も活発に行われました。
今回は『子どもの状態をどう見る(解釈する)か?』の観点を学ぶことができました。
私たちは適応的でない、不適切な行動様式を
「アピールしている」
「言葉で言えばいいのに」
「自分から言えるようにしないと!」
・・・と見てしまいがちですが、ポリヴェーガル(多重迷走神経)理論の観点からすると
子どもの気になる行動は「もっともっと奥深いところから起きている!
その行動はヒトの進化の過程に基づく生存戦略なのかもしれない!」という内容でした。
研修の中で紹介された本が手元にありましたのでご紹介いたします。
大和出版 浅井咲子著
『「安心のタネ」の育て方』
また関連して思い出した本もありました。
飛鳥新社 樺沢紫苑著
『精神科医が見つけた3つの幸福』
ここでは「幸せ」を神経伝達物質から理解するための観点が著されています。
すなわち、『セロトニン的幸福(心と体の健康)』
『オキシトシン的幸福(愛情やつながり)』
そして『ドーパミン的幸福(成功や達成感・お金)』の3つです。
今回の研修ではこの『つながり』がキーワードとなり治療や療育的な支援が
話し合われました。はっと気づかされることが多く感動的な研修でした。
私たちは子どもの行動を、心理的・教育学的に判断しがちですが(教員なので当然なのですが)
生物学的な理解にも観点を拡げ、理解することが大事なのだと思いました。
健康に健康を育てよう!
お久しぶりです。嵐山学園分校のCo.です。
昨年度の投稿から時間が空いてしまいました。あっという間に新年度も一か月を過ぎ
新しい環境での生活にそろそろ慣れてきたり、疲れが出たりしている頃でしょう。
気温も不安定です、体調管理は万全にしたいものですね。
さて、今年も嵐山学園分校では校内の専門研修が始まりました。
第1回目はCo.から話題提供をさせていただいたのですが、
その中で分校職員室(支援者)の『関係性の健康度をあげる』目的で
教職員全員の「私と言えば○○」を3つずつあげてもらいました。
「ジョハリの窓」で言う「アナタの知らない私(Hidden Self)」でしょうか。
これがなかなか面白く、
きっと教職員間の関係性の拡がり・深まりに貢献出来ると思っています。
嵐山分校では「トランザクティブメモリー」「集合知」という考え方を大事にしています。
個々の専門性をあげつつ、助け合える環境でいたいと思います。
支援が必要な子どもを支援する人が健康であること。
また支援する人達の関係性が健康であることは、とてもとても大切です。
共感できる、意図を理解しあえる、でも議論もする・・・そんな関係を目指したいものです。
今年もよろしくお願いします。
それぞれの現場で、健康に、健康を育てましょう!Gesundheit!
「治療」と「ケア」
嵐山学園と学園分校は、オンラインで情報を共有できるツールを活用しています。
異なる場面(学園・学校)での子ども様子を互いに知ることで
子どもに起きていることを連続している子ども像としてイメージすることが出来ます。
これをきっかけに、双方の担当間(担当ー担任)で検討会を開いたりすることもしばしば。
掲示板として全員が閲覧できる機能もあれば、DMとして使うこともでき、
とても便利に活用しています。(出勤したらまず読みます。)
先日、このオンラインの情報交換の中でのDr.の助言がグッと来たので紹介します。
(ここで紹介することはDr.に許可をいただいています。)
“「治療=医療」であり、「医療は病気の人が受けるもの」です”
…とされたうえで、「しかし」と続けられました。
“~「ケア」とは「お世話」であり、「助けてもらうこと」です。ケアは、生活だけではなく、「心理ケア」「医療ケア」など、様々なケアがあります。こういった様々なケアを受けることで、ほとんどのことは解決できます。ケアを当たり前に受けられること――が、最も大切なことです。~”
“~残念ながら、現代社会ではこの「ケア」が失われやすく、その結果本来病気ではないものまでも「病気」と扱われやすいです。その代表が「発達障害」でしょう。近年は発達障害概念の異常な拡大が問題になっていますが、これは「些細な特性もケアできないので、すぐに診断名を求める」ことから生じています。目の前の子どもを守るために診断せざるを得ないのですが、当たり前にケアが受けられないことは本当に悲しいことと思っています。~”
“~日常生活の中で身近にケアを受けられることが子どもにとって最もメリットが大きい支援だと思います。~”
治療で解決することもあれば、それ以前に医療者でない私たちでも
「ケア」で、今起きている問題の解消や縮小に貢献できるかもしれません。
愛着に関わる「関係性の問題」も然り、でしょう。
Dr.は「最もメリットが大きい」とまで言ってくれています。
勇気がでますね。くじけず、専門性を高めていきましょう!
本の紹介『教養としての精神医学』
イマサラですが、分校Co.のNです。実は私、ジャンルに偏りはありますがまあまあの本好き。
最近買った(読んだ)本で、ここで紹介したくなったものがあるので投稿します。
松崎朝樹 著 『教養としての精神医学』(KADOKAWA)
この方は筑波大学の教授でYoutubeなどでも精神医学の講座を展開されており、
難しい医学を、わかりやすく解説されていて人気が高いです。その方が書いた本になります。
SNSなどで知り、出版される前から気になってはいたのですが、
実はタイトルには少し違和感を感じていました。
「教養として」というフレーズに、
「つまり知ってて当然のことですよ」というニュアンスが含まれているのかな、という違和感です。
ちょっと厳しいなぁと感じたわけです。
しかし、読んでみて感じたのは
「精神医学は身近で、誰にとっても必要となる可能性があるもの。知っておいて損はないよ」という
松崎Dr.からのメッセージです。
精神医学的な「見方」を学び、患者さんやその支援者の「味方」になるには
ぴったりの本だと思いました。
新年の新生活に「3の倍数」
新しい年になって最初のCo.投稿になります。今年もどうぞよろしくお願いします。
それぞれの場所で新しい取り組み、新しいチャレンジ、
新しい生活が始まっていることと思います。
新任のころ「新生活の体調管理は『3の倍数』で」と先輩に教えていただきました。
まず3日。→食べたか。眠れたか。
3週間。→自分のリズムがつかめたか。
3か月、6か月、9か月…。→季節を一つずつ越え、
3年、6年、9年…。→仕事を覚え、次の段階に上がっていく。
特に、「うまくいっている」と感じている時こそ、休息が必要です。
うまくいっている時は、休まないからです!「あえて休む」のも大事ですね。
3学期が始まって、年度内のさいごの3か月に入りました。
新規事業が始まった方も、そうでない方も、がんばるためには休息が必要です。
個々に休息をとるためには、互いの助け合いや励まし合いが必要ですね。
自分のいる場所をそれができる環境にしていきたいと思います。
そして新しい事業に取り組まれている方々には感謝とエールを送ります。